奥へと引き込まれる空間
Toberu2号館は、若い起業家が集まり、4ヶ月間寝食を共にしながら学び考える場である。数軒隣に、一昨年5月に竣工した1号館があるので、互いに積極的に連携することで、 志賀越道沿いにメンバーが行き来し、界隈に生き生きとした流れが生み出されるようにしたいと考えた。そこで、1 号館にすでにある食堂やキッチン、ライブラリーといった機能は設けず、ゆっくりと語らうバーや、働くためのシェアオフィスを設け、互いに機能を補完し合うように作られている。
また、間口が狭く奥行きの長い敷地であったため、それを生かす空間構成としたいと考 え、中央に奥行きの深い通り庭を通すことにした。外の道から連続しつつ、同時に奥に進むにつれてその距離以上に遠くの世界まで来た、と感じられる空間を目指している。奥に進むに従って通り庭は半地下へと降りて行き、一方で屋根は上へとのぼっていくので、徐々に吹き抜けが深く高くなっていく。中央には皆が集まる奥庭としての大きな吹き抜けがあり、 トップライトから光が差し込む。通り庭と奥庭に面する壁には、艶のある土壁や、白土とガ ラス質の釉薬を吹きつけたタイル、床にはコンクリート研ぎ出し仕上げ、梁には北山杉磨き 丸太を使うことで、トップライトからの光を受けて空間全体が柔らかく反射する空間となっ た。建物の奥に、通りの外にある現実の屋外空間とは異なる「夢のような外」とでもいうべき空間があることを目指した。通り庭の扉とハイサイド窓を開け放つことで、風が南北に流れるように計画されている。
通り庭の視線の抜けを大切にするため、2階へ上がる階段は吹き抜けに出さず、両脇3箇所に分散して設けている。そのため、一見明快に見える空間構成の中に複雑な動線が編み込まれている。動線のあちこちに居場所が点在し、通り庭を横切ったり、テーブル越しに垣間 見たりできる。起業家たちが集まって暮らす場として、パブリックな場からプライベートな 個室までを、対話の相手や状況によって段階的に使いこなすことが出来る。また、個室を閉じたものにせず、通り庭に向かって机と一体となった出窓を設けることで、個室同士で互いの活動を垣間見ることができる。入口から通り庭を抜け、階段を登って最後に個室へ到着す る空間体験が行き止まりにならず、窓を介して光あふれる通り庭へと再び戻ってくるように 計画されている。
toberu2の吹き抜けは、風や光の通り抜ける半屋外の空間と感じられるように、それぞれ少しずつ反射する素材が使われている。通り土間の壁は、あさぎ土撫切り仕上げ、という光によってグレーにもベージュにも見える土を柔らかく反射するように塗っている。また、一番大きな吹き抜けの壁には、常滑で焼いた特注タイルを使っている。タイルには白い土を釉薬としてかけることで、土壁と馴染みつつ、下から上に向かうにつれてより艶が多くなるような仕上げとしている。通り土間の上には、北山杉の磨き丸太を使うことで、反射する梁となった。