大西熱学小牧事業所は、特殊空調を得意とする会社のオフィス兼作業所である。小牧事業所が開設されたのは52年前であり、敷地内には2棟の既存建物があったため、プロジェクトの初期段階から、どのように日常の業務を継続しつつ、新社屋を建てられるかが大きな課題であった。そこで、まずそのうちの一つを壊し、一期工事のオフィス棟を建て引っ越しを済ませた後、二期工事の大屋根を架ける段階的な計画とした。建て替えの手順上、南北方向に長い棟配置となったため、東西面で日射防ぎつつ照度を確保するため、西面はワイヤーをかけて緑化し、東面にはルーバー状の大屋根をかけて光を柔らかく拡散させている。コストを抑えつつも印象的な空間を生み出すため、一期工事のオフィス棟の外壁は住宅用サッシを組み合わせて作った。同時に、内壁には常滑焼のタイルを使用し、柱等を濃さの異なるベージュ色で塗り分けることで温かみの感じられる空間としている。オフィス棟はこれまでの働き方を踏襲し、見通しの良いシンプルな構成とし、二期工事の大屋根下空間は、打ち合わせをしたりグループでディスカッションしたりと、これまでとは異なる新しい働き方が生まれてくる場を目指している。大屋根は梁を自重で撓ませることによって構成された、テント下のような伸びやかな空間である。
大西熱学は、設計者である大西の父の会社でもある。設計が始まったのは竣工の10年以上前で、普段は無口な父が社員の皆さまに向かって「この社屋をつくるのは私の夢だ」と言ったのが忘れられない。私たちは、これまでにも建築をつくるプロセスを大切にしてきたが、父や父とともに仕事をしてきた方々と対話し、その仕事の様子を知ったり、新しい働き方を模索する時間はかけがえのないものであった。完成して、この建築をつくるのは私たちの夢でもあったのだと感じている。