目黒区に計画した5階建ての住宅。敷地は敷地は向かいの家の大きな木が腕を広げて迎える細い路地に面していて、賑やかな商店街からほんのわずかだというのが信じられないくらい、静かで落ち着いたところにある。まず路地に面して、半地下の小さな小屋が建っている。ここはゲストルームとして使われるほか、将来的にはギャラリーやカフェスペースになってもよい、家の中のパブリックな場所である。その後ろには3階建ての水回り棟があり、キッチン、シャワールームと洗濯室、浴室が重なっている。2階のシャワールームへは屋外の階段から直接アクセスできるので、キャンプなどで汚れて帰ってきた時などには、真っ先にシャワーで汗を流すこともできる。水回り棟の奥には4m角ほどの小さな居室の積み重なった5階建ての塔が続く。周囲を家に囲まれたほの暗い1階のダイニングスペースから、ぐるぐると階段を上がっていくと、突然4階で見晴らしのよい明るい空間に出合う。ガラスの引き戸を大きく開け放つとテラスと繋がり、風と光の通り抜けるほとんど外のような場所となる。最上階の5階は子どもたちが遊ぶ場所で、街から頭ひとつ飛び出したその部屋を、私たちは「空中のはなれ」と呼んでいる。
またこの家には、たくさんの小さな屋外の居場所がある。たとえば敷地の最も奥にある玄関には、小屋や水回り棟の間の路地空間を縫うようにして辿り着く。路地に面する小屋の屋上のテラスは、家の前を通る人と声を掛け合うことのできる距離で日曜大工をする場所だ。4階にはレモンやオリーブの植えられた明るいテラスがあって、ここへは2階から屋外階段が通じている。だから、子どもたちが大きくなってひとりでこっそり出かけたい時には、両親の部屋を通らずに外に出ることもできる。暮らしの中で家の中にいるのと同じくらい、自然と外に出る機会が増えることで、自分がどんなまちに住んでいるのかが日々感じられるし、家族の暮らしの一部がまちに現れることで通りもよりいきいきとした場所になるのではないかと考えた。