2013 年の瀬戸内国際芸術祭に、クリエイター・イン・レジデンスとして小豆島坂手港に11 日間滞在し、ワークショップを行った。私たちは地元の中学生ゆうこちゃんをパートナーに、坂手の方々からお話を聞 き、お気に入りの道や秘密のルートを教えてもらった。教えてもらった道を実際に歩いてみて、感じたこと、発見したことを描きとめ、 まちの新しいマップをつくった。さらには、教えていただいた坂手の魅力をまちの人と一緒に体験するために、ワークショップ最終日には夕暮れ演奏会を計画した。見通せない路地の先から楽しそうな音楽が聴こえ、音に誘われ歩いていくと小さな空き地があって演奏会が始まる、というものだ。

このワークショップをきっかけに小豆島へ何度も通うようになった。坂手に泊まって、きれいな海を見て感動し、おいしい食べ物やまちに漂う醤油 の香りに驚き、人々とお酒を飲んで話す。坂手の人からは、町の話をたくさん聞いた。 狭い路地を歩く時に向こうからご飯の匂いがして来ることや、ピアノの音 が聞こえて来ること。昔は港に大きな船がたくさん着いて、海沿いの通り に灯りが一杯ともっていたこと。祭りのことや消防団のこと。今町でやってみたいことや、問題になっていること。数年にわたって伺った話を少しずつスケッチ に描き起こし、模型を作り、話し合いを続けたことは、どこへ行っても私たちがまちについて考えるときの手掛かりとなっている。